モノクロ写真から [課題―創作文]
2月からほとんどのクラスで「形を整えて書く作文」に取り組んでいたので、今週は少し気楽に、お話を作りました。
中学生は、写真を見てお話を作る課題。
写真はモノクロ写真を選びました。路地裏、商店街、坂道。どこかでみかけたような、町の一角を捉えた写真です。
中学生には、勝手に空想を働かせてもらうよりも、少し制約をつけて考えてもらったほうが面白くなります。
まずは、写真をよく観察しました。
空の色はどんな色だろうか。
他にどんな色が見えそうか。
風は吹いているか。どちらからどちらへ? 強く、弱く? それはどんなことからわかるか。
においはするか。どこからにおうか。
音は? どんな音が? どこから? 見えないけれど、この先を車が通っていると思うか。
季節はいつ頃だろう。時刻は? 夕方?
写真に写っている人は、何歳くらいに見える? なぜ?
服装からわかることは? 裕福そう?
体つきからわかることは? スポーツをしていそう? それとも苦手?
この人は今、緊張してる? リラックス? なぜわかる?
写真の中の人が何を考えているか、という空想を働かせる前に、できるかぎり事実に近いであろうことを読み取り、拾い出して行きます。
川幅から海への距離を。
水面の近さから、乗っている船の大きさを。
見える橋の数から、町の規模を。
看板や塀の古さから、近隣に住む人びとの年齢と家族構成を。
遠くに見える木々から、道の先にあるものを。
写真が伝えている情報を読み取った上で、ようやく「その人」が考えていることに手を伸ばします。
読み取った情報を基盤にして、その人がどこへ向かうのか、何を考えているのかを想像します。得た情報を無視して空想するのではなく、こういう町の、こういう人だから・・・と考えていきます。人が持つ背景を意識して想像すると、リアルな何かが浮かび上がってきます。
リアルさを増すために、話のどこかに、写真の風景を描写する箇所を入れてほしいと伝えました。
今そこで、自分が呼吸しているつもりで、聞こえてくる音や、地面の硬さや、どこかの台所から漂ってくる肉じゃがの匂いを入れてみてほしいと求めました。
写真が物語ることを読み取るうちに、ストーリーが動き始めるのを感じたようです。
授業1コマで終わるつもりだったのですが、「これはどうしても書き切りたい」という人が何人かいて、続きに取り組むことになりました。
「書き切りたい」という言葉が嬉しいですね。描いた世界を形にしたい、という欲求です。
友人に「続きが読みたい」と言われ、はっとしたもののすぐに笑って応じていた男子がいました。
彼らはもうすぐ教室から卒業です。
二人の、この通じ合う姿を忘れないでおこう、と思った一瞬でした。
*授業で使わせていただいたので、その写真集の紹介を・・・。
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