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「となりの席の子」 [課題―生活文]

教室では意見を述べる文だけでなく、毎日の生活のこともテーマにします。
文章の主軸になるのは、いつでも「人」。
今週は多くのクラスで「となりの席の子」を題材に作文を書きました。

好きな人を選んで書くと、「好きな理由」を述べて簡単に終わることが多いように思います。
「人」の姿を見えるように描くというより、その子のよさを書こうとするせいかもしれません。

そこであえて「好き・嫌い」の別なくそばにいる人・・・「となりの席の子」を題材にしてみました。



「文章の主役は、いつでも『人』。ということで、今回は『人』がテーマです。誰をテーマしようか、かなり迷ったんだけど・・・。」
(ちらりと皆を見る。誰を言われるかと待ち受ける顔。)
「ながーい時間、一緒にいる人がいいだろうと思って・・・『となりの席の子』をテーマにすることにしました!」
「え~~~~~っ」

多くが不満げに声をあげます(振りをしているにすぎませんが)。
数人「やった!」と小さくガッツポーズをしている人も。となりの子に多くの特徴があるのでしょう。

「え~っ、しらんもん! 女子やし!」
「いやや、かきにくい!」

「そうかなぁ、学校にいる間、いっつも一緒におるのに? となりを見てなくたって、そばにいれば聞こえてくる音や伝わってくる雰囲気があるはずだよ。例えば、授業のとき、いっつもぐた~っと机にもたれているとか、ぐらぐらイスをゆらしているとか・・・」
「ああ、ゆりいす? やっとるやっとる。」
「ウチのとなりの子、いっつも大声出しとる。しゃべってばっか。」
「それ、オレ!」

「しらん」はポーズで、ちゃんとみんなとなりを意識しています。
自分のとなりがいかに「うるさい・まじめ・わらえる」のか、いっせいに話そうとし始めます。
ある程度話してもらったら・・・、

「私はあなた達の学校に行ったことも、クラスを見に行ったこともない。知らない人を紹介するのに何を書いたらいいだろう? 例えば・・・顔や体つき? 特徴を見るんだよね。鼻の脇に大きなほくろがあるとか、びよ~んと背が高いとか・・・。」
「あっ、私のとなりの子、本当にほくろあるよ。」

「他には・・・。」
「においとか?」
「はは! 匂いね! いいねぇ、私が中学校のときのとなりの子、夜食ににんにくラーメン食べるらしくてね、午前中はけっこう鼻にくーんとくるにおいがしていたんだよね・・・。」

などと、「私」が持つ体験を入れながら、取り入れるとよさそうなものを皆で挙げていきます。

・顔つき/体つき
・持ち物
・声の特徴
・口癖/行動の癖

・授業中・・・聞き方は? 姿勢は?
・休み時間・・・授業中とどう違う? 誰といる? どこにいる?
・給食・・・食べ方に癖はある?
・掃除時間・・・掃除の仕方は? さぼってる? 何してる?

・その子に友達は多い? 何をしている?
・ある日の彼(彼女)のこと・・・・

私自身が持つ体験を加えながら、あれこれ話していくと、ほとんどの子が「書きたいこと」を見つけたような顔になっていきます。
切り口が十分に生まれたようだな、と感じられたら作文に移ります。

「好きとか嫌いとかだけで終わらせないでね。そうではなくて、その子をえがくんだ。それに、その子はちゃんと10年近く生きてきている。なのに『面白い子です』の一言で終えられたら、『私はたった1行で終えられちゃうような人間じゃない!』と言うと思うよ。だからね、その子のいろんな面をみて、となりにいる君たちだからこそわかるようなこと、書いてみてね。」


後はそれぞれに任せます。
ときどき笑いながら書く子、うーんと宙をにらんで言葉を探す子。
こういう課題では、途中で声をかけることはほとんどありません。
最後まで自分で流れを作って仕上げてもらいます。
うまく書くことよりも、自分で伝えたいことを探し言葉にする。
その体験の積み重ねが、力になると思うからです。


導入で大切なのは、「喚起する」こと。
となりの子をリアルに思い起こさせるために、「書き方」ではなく「姿」を掘り起こしていく。
その中で、私自身も自分を語ることが大事だと思っています。


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