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2010年の句会 [課題―詩・俳句・その他]

1月最初の週は、皆で俳句を楽しみました。
作った句の中からそれぞれの自信作を清書し、廊下に掲示。
2週目、今度は審査員となって
「情景が見えるなあ」「よくわからんけどすき」という句を選び、投票しあいました。


俳句は詩と同じく、気持ちを情景にのせて表現します。
しかし、俳句は詩よりもうんと短い。
さらに言葉を選びぬかねばなりません。

とはいえ、詩にしろ俳句にしろ、あまり技巧を凝らしすぎないで
うたうように、つぶやくように、気軽に楽しめばいいのでは?
と思うこともあります。

さらっと作った作品のなかに、素朴な味わいがあったり、子供らしさが光ったり。
ぐちゃぐちゃ考えすぎないほうがいいことも多くあります。
それに、作品を作り続ける中で、「もっと・・・!」という気持ちが自然に芽生え
自分なりの工夫を凝らすようになるというほうが『表現らしい』とも思います。


しかし、詩や俳句を日常的に楽しむ子どもはあまりいません。
ここでの制作がめったにない機会なら、多少四苦八苦することになっても
受け手を目の前にしているからこそ生み出せる工夫や表現に出合う、
そんな体験が今後につながるのでは・・・?
と思い直し、毎回働きかけをしています。


というわけで、今回もベースとなる句を作ったら
不必要な言葉を省く、別の言葉に置き換える、語の位置を変えてみる・・・、
などの手直しを行いました。


今年の最優秀賞は、小6の女の子が作った句でした。
もちろん彼女も推敲に推敲を重ねて仕上げました。

ベースとなった句はこのようなもの。

真っ黒の 筆先見つめる 書きぞめだ

書きぞめで、いい字を書こうと集中しているのがわかる句です。
これでもちゃんと形になっていますから、触らなくてもいいにはいいのですが
本人は「もう少し・・・」と推敲する気でいました。

語の位置を変えると少し雰囲気が変るよ、と私が別の子に言っていたのを耳にして
書き換えようとしていましたので、ほんの少しアドバイス。
「書初めの筆先は、『黒』と決まっているようなものだから、
いわなくてもわかることは省いてもいいかもね」

それで、彼女が手直しした句がこれです。

書初めだ 黒い筆先 ふるえる手

「真っ黒」をやめたことで、五字の余裕ができました。
それで彼女は「緊張」を伝える自分の手を見せたのです。
なかなかの工夫です。

でも、まだ「黒」は残っています。そこでつい、
「真ん中の七字とその後の五字を合わせて表現してみたら?
手が震えたら、筆先も同じようになるだろうし・・・。
空いた分で、新たに何か言えるかもしれないよ」
と言ってしまいました。

言った直後に、これは押しすぎだったかな、と思ったのですが
その反面、彼女なら私が想像もできない世界を作れるのでは、という期待もありました。
しばらくの思案の後、彼女が仕上げた句は
ああ、やはりね! と思える「見える」句でした。


「書きぞめの ふるえる筆先 墨が落ち」  まり・


すごいなぁ、と思いました。
ものすごくおしゃべりな句です。彼女の、
「よし、やるぞ!」「でもちょっとこわい」「どきどきする」
「・・・・・・あっ!!!!!!!!!」
「なんで!?」「もう、またやり直し!?」
・・・が、この五・七・五につまっています。


この体験は誰にでもあるもの。
共感を呼んで、ダントツの一位でした。



俳句も詩も、私はプロではありません。
その道の人からみたら、邪道だと思われることもあるでしょう。
しかし、私は俳句や詩の天才を育てようとしているのではありません。
よりよいものを求めて粘り強く工夫を凝らす、
そんな力を持った人を育てたいと思って臨んでいるのです。

ここでの経験が、他に生かされることを祈って
彼らと共に言葉と親しんでいます。


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