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秋休み [つれづれ]

10月末、用があって奈良に出かけました。
といっても、それほどたいした用ではなかったので、ついでに観光も楽しんできました。

行きたいと思っていた、西ノ京と飛鳥です。

飛鳥を散策した日はあいにくの曇り空でしたが、刈り入れがすんだ田んぼの間を急ぐことなく歩くのは気分のいいものでした。ジャージ姿の中学生が何班にも分かれて遺跡めぐりをしているのにも行き会いました。古代人のお墓の前で賑やかにはしゃいでいるのですが、ぽーんと開かれた空にその声も吸い込まれていきます。彼らの放出するエネルギーも人にはぶつからずにすむので、気楽でいいなぁと思いながら歩きました。

今回、飛鳥に行きたかったのは、どんな土地だか見てみたかったのもありますが、万葉文化館で田中一村の絵画展をしていたからでもあります。奄美の動植物を描いた一村の作品の、そのきっぱりとした色彩に、以前強く惹かれたことがありました。絵画展をすると知って、どうしても一度、実物を見てみたいと思ったのです。


訪れたのは平日だったせいか、万葉文化館の展示スペースには人があまりいませんでした。
誰かにせかされることなく、一つ一つの作品を間近で見、遠くから眺め、また寄って確かめる・・・それを存分に繰り返すことができたのは幸いでした。NHK出版から出された作品集を1冊持っていますが、筆の動きまでは読み取ることができません。今回初めて実物を見て、筆の運びから腕の動きを想像し、生きた一村を思い描くことができました。こういう楽しみ方ができたのは、初めてのことでした。


最後の日に歩いたならまちでも、同じような出合いがありました。奈良町資料館に、なぜだか三島由紀夫や宮澤賢治などの文豪の直筆(たぶん)原稿が展示されていたのです。三島由紀夫の美しい筆致に感心し、夏目漱石のちまっとしたかわいらしい字ににやりとし、活字になったときには感じられなかった、文豪達の息づかいを思うことができました。

それから、400字詰め原稿用紙でみる文章は、文庫本で見るのとはかなり違いがあることにも気づきました。文庫本を1ページ見渡せば、多くのことを知ることができます。しかし、400字詰め原稿用紙1枚では、ほんのちょっぴりのことしか描くことができません。ストーリー全体からみれば、本当にほんのちょっぴり。一つの物語を紡ぐのは、そのほんのちょっぴりを重ねていく忍耐と全体を見通す力が必要なんだなぁ、と思いました。当たり前だといえばそうに違いないのですが、本人の手による、全文を知る作品の最初の1ページに出合って、ようやく心底理解できた気がします。

 


秋休みの最中でしたので、先週の更新を休んでしまいました。が、それを良い機として、ブログとの付き合い方を少し変えようかと思っています。
しばらくは敬体で書いてみようかな、というのもその一つ。常体だとつい気張ってしまうのですよね・・・。


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