新年の一句 [課題―詩・俳句・その他]
2009年最初の記事です。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
新年最初のお題は「俳句(川柳)」と決めています。
冬休み、遊ぶことに忙しかった皆ですから、さぁ作文、といってもなかなかエンジンがかかりません。
そこで、表現への意欲をもう一度沸き立たせるために、1月は俳句から始めています。
俳句は詩よりもさらに、一瞬を切り取るように描きます。
カメラのシャッターを切るように、「このシーンを!」と定めて言葉にします。
“いとこと遊んでいたときのこと”というような、あいまいな捉え方ではなく、「いとこと遊んでいたときの、あのゲームをしていたときの、あの回の、あの悲惨な負け方をした、その瞬間!!!!」と決めるのです。
現実に起きた『瞬間』をしっかりと思い出し、顔や手の動きや、みんなの声、体の反応、そういうもの全てを思い出します。そして、それらを凝縮して伝えられる言葉を探していきました。
とはいっても、最初から磨き抜かれた言葉で表現するのは難しいもの。
まずは描きたいシーンを絞り、一句作ってみます。
それを原句とし、もっと動きが見える言葉に、もっと物の様子がわかる言葉に置き換えていくようにしました。
ある4年生の男の子の一句。
きたがぜが ヒューとふくと とばされる
5・7・5にはなっていますが、なんとも味気ない。絵が見えてきません。
そこで、「北風が吹いて、何が飛ばされたの?」と聞いてみました。
「葉っぱ」「どんな葉っぱ?」「落ち葉」
「どんな感じの? 黒くぬれた葉? 虫食い? 枯れた葉?」「うーん、しわけた葉っぱ」
『しわけた』とはおもしろい表現です。それを採用し、次に風の吹き方も聞いてみました。その時吹いていた風の強さや勢いにふさわしい表現を探してもらったのです。
言葉を磨いて作り直したものが次の句。
きたかぜが しわけた葉っぱを ふきこわす
前の句よりも絵が見えてきました。「ふきこわす」という表現にも彼なりのこだわりが見えます。「ふきとばす」では足りないのですね。「ふきこわす」んです。いいこだわりだなぁ、と思います。
もう一つ、粘った人の句を。
5年生男子の原句。
お正月 いとこといっしょに ゲームする
これまた、単なる文となってしまっています。
それで、ゲームを題材にするなら、その中の「何を」テーマにしたいのかとたずねてみました。
「何を表したいの? 楽しさ? 皆で笑ったこと? 負けてぐやじい~~~!と叫んだこと?
気持ちをテーマにしたいのか、ゲームをしている皆をテーマにしたいのか、どうなのかな?」
「う~~~ん・・・」
どうやら、焦点を絞りきっていなかったようです。そこで、どんなゲームをしたのか、いつもどんなふうに遊んでいるのかなどを聞いていくと、彼の弟が「兄ちゃんは負けそうになるとさぁ・・・」と口を出しました。
「だまれて!」「いつもさぁ・・・!」「だから、だまれって!」
どうやら、負けず嫌いの彼は、負けそうになったときの奥の手がある様子。
彼より数段負けず嫌いの私ですから、気持ちを察して思わずにやり。「いいじゃん、それ句にしちゃえ!」
「えぇ~~!」と彼。 でも作った一句。
リセットだ 負ける前に 終わらせる
映像よりも、悔しさと強気とこんにゃろが聞こえる句です。
どこかに応募して入選する句かどうかはわかりません。しかし、描きたいものを定めて言葉を選び抜くことは、作文にも詩にも俳句にも共通する、大切なことのはずです。
皆、「この一句」を求めて、笑いながらうなりながら作りました。ほんの少しだけご紹介を・・・。
小松菜を なべにふわっと ママの手が (小5女子)
おぞうには くちびるベタベタ へらないな (小3女子)
冬休み いっしゅんたたずに にげていく (小3男子)
シャツのボタン かじかむ指先 じれったい (中1男子)
受験まで 数える昼に 雪ゆるり (中3男子)
年賀状 おすがへらない 友の声 (小5女子)
今年もこだわりの一作が期待できそうです。
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