ジャッジしない [子どもの言葉を変える魔法]
正解が一つでないものを考え抜く姿勢を育てるために
教室では多くの働きかけをしていますが、
その代表的な課題に「討論と意見文」があります。
先週はいくつかのクラスで「討論」を行いました。
今週はそれを受けて「意見文」に臨みます。
「図書館にマンガを置くべきか(増やすべきか)」や
「スポーツや舞台は、生でみるのとテレビでみるのとでは、どちらがよいか」
「中学校の掃除は清掃会社に任せるべきだ」
などのテーマに取り組みました。
討論では以下の流れで授業を行います。
1 まずそれぞれの利点・不利な点をノートに列挙する(一人で考える)
2 2チームにわかれ、意見を述べる(先攻・後攻を決める)
3 提示された意見に相手側から反論。反論にさらに反論。
4 十分に深め合ったら、別の視点からの意見を後攻から提示。討論。
5 多角的に検討しあったら、チームの枠をはずして
「そもそも図書館とは(掃除とは)・・・?」と存在意義を考える機会を作る。
それぞれの体験や素朴な気持ちも尋ねていく。
いつも同じ流れで行うわけではありませんが、上のようなことをしています。
私の役目は、皆の意見を漢字熟語に置き換えて強化したり、
(と同時に、なじみのない語に触れる機会を作ったり)
意見がかみ合っていないときに、論点を整理したり、
どちらかのチームがあまりに押され気味となった場合に加勢したり・・・。
・・・ですが、基本的には「合いの手を入れる」役割を意識しています。
子ども達の中には、意見を述べようとしても
言い足りなかったり、話がずれていってしまったり、
自信がなくてどもりがちだったり、ということがあります。
この教室では何を言っても大丈夫、という安心感を持ってもらうために
基本的に私は、ジャッジしません。
意見が(または述べ方が)よい・わるいという観点で言葉を返してしまうと
次からは警戒して口を開かなくなります。
ですから、まずは受け止める。
そして、もう少し詳しく聞きたいときは、「聞きたい」という熱意を示して先を促す。
これを、心がけています。
具体的には、
1 「へ~ぇ」「ふむ」「なるほど」などの相槌
2 「おもしろい!」「するどいねぇ」などのほめ言葉
3 「へぇ、**か」と、子どもの言葉をそのままくり返す
4 「~ということか。なるほどね」と、別の言葉に置き換える
をしてから、
5 「・・・で、どうしてそう思うの?」
6 「う~ん、そこのところ、もう少し聞きたい。たとえば?」
7 「そう思うきっかけになった体験ってあるの?」
のように、詳細を聞く言葉がけをしていきます。
決して、審判は下しません。
よい述べ方、よい視点については、
感嘆をもって「どこがどう素晴らしいのか」を皆に伝えます。
しかし、「その述べ方はわかりにくい」「もう少し理由をいってくれないとだめだ」などの
否定的なことは、ほとんどいいません。
よくないことを伝えても、次の一歩にはつながりません。
「よい」ことは強化して伝えること、
「あなたの意見を聞けてすごくよかった」という姿勢を示すこと、
それらが討論を活性化しますし、子ども達の「伝えたい!」という気持ちを育てると思います。
正解がない課題に立ち向かう力を育てるには、
やはり、「場」が必要です。
意見を伝える、他者の考えを知り受け入れる、
それが自然にできる安心感のある「場」が、
「答えがない」という不安にとらわれることなく考え抜く体力を育むと思います。
言葉も姿勢もジャッジしない。
大切なのは、傾聴する姿勢です。
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