作文は主体性を養う [作文のチカラ]
名古屋で講座を開くにあたって、もう一度「作文とはなにか」を考え直しています。
今の子ども達に共通する特徴は何か、
作文は子どもたちのどんな力を育てるのか、
そんなことをとりとめもなく考えてメモを取っています。
先日、OECDの学力到達度調査(PISA)の結果を見直していました。
結果からいくつかの課題が挙げられていましたが、その中でふと気になったのは
記述式問題の無回答率が高かったということ。
そういえば、と思い出すのが子ども達の反応の変化です。
教室開設当初は、私の投げかけにすぐ答えを返す子どもが多かったように思います。
その様子はよく言えば「反応がよい」ということになりますが、
「ともかく速く、何かを返せばよい」といった印象も受けました。
たとえるなら、テニスのネットプレーのように、
前衛でぽんぽんと来た球を「返す」ことに一生懸命になっている感じなのです。
手元まで引き付けて、球をよく見て、どう相手に返すとよいか、
そこまで考えての「言葉」ではなかったのが気になって
「すぐ」ではなく、「十分に検討する間を持って」述べようという働きかけを
多くしていたように記憶しています。
では、今はどうかというと、
以前に比べて「すぐに」答えを返そうとする子は減りました。
それよりも、私の言葉をぼーっと聞いている子どもの姿が目に付くようになってきました。
話を聞いていないわけではないのです。
ただ、あまり表情が動かない。
そして、「自分に」働きかけられている、という感覚が薄い。
そんなふうに感じる子どもを、ちらちらと見かけるようになりました。
その人たちは、
「ね、どう思う、**君?」と名指しで声をかけて初めて、はっとして考え始めるのです。
テニスコートの中で、とんでくる球を目で追うけれど、
体は動かず、それを見送っている。
そんなイメージが浮かんできて、ひやりとしました。
記述式で無回答であるというのは、
主体的に物事を考える経験を十分に積んでいないせいもあるのではないかと思います。
無回答の子ども達に「考える力」がないとは思いません。
ただ、普段から、「自分のこと」として物事を見、疑い、考え、伝えるという機会を
彼らは十分に持っていないのではないかと思います。
受け身のままでは、人や社会に働きかける力を磨いていくことはできません。
そうなると、コミュニケーションをとることに自信を持てないでしょうし
受動的に周囲とかかわっていく方法しか知らないまま、大人になってしまいます。
文章を書くことは、能動的・主体的な活動です。
物事を多角的に見るということも
多様な見方を知った上で、自分の考えを組み立てていくということも
自分以外の人を納得させるよう書くということも
全て、主体的にかかわろうとしなければできないことです。
作文は主体性を養う、私はそう考えています。
現代社会で活躍するためには、PISA型学力が必要だとされています。
作文を書く時間を持つのは、
単に文章を上手に書けることを目指して、ということではありません。
正答が一つでないものを考え抜く力を養うのが、作文だと思っています。
そうそう、そのPISA型学力を伸ばすのによいワークブックがあります。
思考力を養うのにも、簡潔明瞭に意見を述べるのにも役立つ本です。
おススメです。
藤原流200字意見文トレーニング―未来を生き抜くための「柔らかアタマ」をつくろう!!
- 作者: 藤原 和博
- 出版社/メーカー: 光村図書出版
- 発売日: 2010/04
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