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場面で始まり、場面で終わる [課題―生活文]

11月は描写力をつける課題に多く取り組みました。
左のカテゴリー『課題―描写』で紹介している、
「実況中継」と「5分の散歩」を連続して行った後に、
「応用編だよ~!」と言って、学校のある時間のことだけを描いてもらいました。

授業よりは、給食や掃除の時間の方が
「いつものこと」と「予期しないこと」が交ざっていて書きやすいようです。
今回は、いくつかのクラスで「給食時間」に取り組みました。


「さぁて、今月は『場面を書く力』を磨くレッスンをしてきたので、
最後に応用課題に挑戦するよ~。」
「げ~。おうよう~。」「まじか!」
(・・・この反応、ほとんど合言葉化してますね)
「さて、場面を描くために重要な要素ってなんだったっけ? 漢字一文字で3つ! だったね~。」
「ええと・・・、場!」「人!」「・・・う~ん、時?」
「そうそう。人と時と場。これを見えるように描く。
人の顔の動き。肩、背中、指先の動き。物の色、形。空間の広さや狭さ。
声。音。におい。昼間だったら、光。そして影。そこを吹き抜ける風。
そういったものを、見せていくんだったよね。

大事なのは、とどまって書くこと。すぐに次に移らない。
汁物が登場したら、その具や温かさや味を、物の名と舌触りとで見せていく。
隣の子が出てきたら、その子の口の開け方や、物の扱い方を書く。

『おいしい』『楽しい』『まずい』は、わかるね、この教室では使わない。
『おいしい』と書かずに、『おいしそう』な様子を見せる。
『おいしそう』は、自分で宣言するのではなくて、読み手に感じてもらうことを目指すんだ。
いつも通り、ね。」

とはいっても、「え~、今日~? 特に何もなかったよ~。」と言う子や
「給食以外じゃだめ~?」なんて、気弱なことを言う子がいるので、
雑談のように、それぞれのクラスの給食風景を尋ねていきます。

「学校によってずいぶん給食のルールが違うらしいけど、
係りが配っている間、みんなはどうしているの?
聞いた話の中で、一番びっくりしたのはさ、
チャイムが鳴ったら係り以外はみんな廊下に出されるっていうところがあったよ。
配膳中は係りだけが教室にいるの。ほかの人は外で待ってる。」
「えぇ~~~~っ? なんで?」
「うちは、みんな本読む。ナフキン出したら、みんな本読むことになってる」
「あのさ、ぼくんとこはさ、箸忘れると後で倍返ししないといけないの。
1回かりたら、次の日2本もってこないといけない。」
「え~っ、そんなんないし。」

給食ルールは、本当に面白い。
食べている間は絶対しゃべってはいけないところや
残ったもののおかわりじゃんけんを最初にやるところ、
食べきった人だけ、しかも12:50にならないとできないところ、さまざま。

配膳に関することも違います。
係りになったとき「やりたい」「やりたくない」仕事もそれぞれですから
そんな話を聞いていきます。
そうやって、「いつも」の給食を話していると、
今日はどんなふうに過ごしたかを明確に思い出せるようになってきます。

「おもしろいねぇ、じゃあさ、そういうルールについても伝えるところを作ろうか。
今日は作文の書き方にも一つルールを作ってみることにする!

出だしは描写。場を見せる文で書き始める。
ここは前回の時と同じね。声、動き、光、なんでもいいよ。
見せるように描くところから始める。
そして、その場を見せきったら、
少し『解説』するように教室のルールについて紹介する部分を作ってみようか。
ルールを伝えたら、また場面。
今日の給食で一番の山場の少し手前から始める。
山場はスローモーションだよ! 丁寧に、ゆっくり、じっくり見せる。
読み手をわくわくさせなくちゃね。
そして最後のシメ! いつも言うよね、何で終えるか、だ。
牛乳のパックで終える? ナフキンのシミ? 窓から見える空? 声?
読み手の心に何を残して終えようか、と考えてみて。
だから、最後も描写ってことになるね。

じゃあ今日の作文は、最初と最後は描写で、っていうことにしよう。」


そんなことを働きかけてから、作文に取り組んでもらいます。
この
頃には、どの人にも「書きたいこと」が浮かんでいますので
「さぁ書く、もう書ける!」というような顔つきです。

書き始めると、うっかり(一生懸命になりすぎて)場面描写を忘れてしまう人もいるので
ときどき声をかけていきます。
ですが、「場面で始めて場面で終える」というルールが守れていなければバツ、
ということではありません。
読み手に伝わりやすい構成例として提案はしますが
そのルールに従って書くことより、その人がどれだけ読み手を意識し、言葉を選び、
文章で自分を(自分たちを)伝えようとしたか、を大切にします。


今年度も半ばを過ぎ、どの人も力を伸ばしてきました。
ことばの幅が広がったり、書く量が増えたり、見せ方がうまくなったり。
自分でも手応えを感じている人が多いようです、
「ど~うだ!」という顔で作文を持ってきてくれます。
(私を嬉しくさせる顔です!)

2学期もあと1カ月。
今のところ、今年も最後の課題は「詩」のつもりです。
これも描写の応用ですね。
磨いた力で「見せて」もらいたいと思っています。


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