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「うれしい」と書かずに「うれしさ」を描く [課題―描写]

今週は「描写」のレッスンを中心に行いました。

教室では、「うれしい・たのしい・おもしろい」などの「くくる」言葉は
できるだけ避けるようにと伝えています。

「うれしい」の一言は便利ですが、
うれしさの質までは伝えてくれません。
100円拾って「お、やった!」のうれしさと
どうしても勝てなかった相手に、練習の末ようやく勝てた!のうれしさとは
歓喜の大きさや体を走る感覚が、まるで違います。

読み手を自分に同化させるなら、
「うれしい」と書くより「うれしさ」を描かねばなりません。
うれしさがあふれた顔(目・ほほ・口もと)で、
肩や背中で、
足の運びで、
ものの持ち方で、
ゆれる髪の毛で、
「うれしい」とは書かずに、「うれしさ」を読み取らせます。

今週は、原稿用紙半分(10行)で、
「うれしい・くやしい」と書かずに「うれしさ・くやしさ」を描くという課題に取り組みました。
描く気持ちや場面はクラスによって変えました。
「苦しさ」に取り組んだクラス、
「寒さ」を見せるように書いたクラス、
「風」の吹くさまを描いたクラス・・・。
これは描写のレッスンですから、実体験そのままでなくてもかまいません。
体験したことの中から、いくつかを組み合わせて「強調し・演出し」描いていきます。

10~15分程度で書いてもらった全員の作文を、皆の前で読み上げました。
読み上げながら、「どの言葉が・どのような効果を上げているか」を伝えていきます。
逆に、効果を半減させてしまっているところや言葉の足りないところも指摘します。
人の工夫を聴いて、注意するべき点を知って、
それぞれの表現の幅を広げるきっかけにしてもらいたいからです。


金曜・小学生の本科クラスでは、「怒り」「うれしさ」がテーマでした。
一人の子が、人の動き・表情で、怒りを表現した後、
最後に窓から冷たい風を部屋に入り込ませて
部屋に漂う不穏な雰囲気を「風」で悟らせるようにしました。
その大人びた表現に、「これはやってみなくては!」と思ったのか、
他のメンバーが次の「うれしさ」で挑戦。
笑い声を廊下に響きわたらせた後
「まどからのゆるやかな日差しが男の子を照らす」と締めました。

今日の単科では、「強い風」と「弱い風」を書きました。
激しい動きのあるもののほうが書きやすく、
変化の少ないものは書きにくい。よって、弱い風は難しくなります。

しかし、今日の子たちはものともせず!
初参加の女の子は、
ゆれるカーテンの隙間から、日差しがもれ入る様子を描き、
ほぼ毎回参加の中1女子は、バケツに張られた雨水の反射の揺れで風を見せました。
二人とも、「光」で見事に弱い風を描き出しました。
しかもその文章は、
 「きれい」とも「あたたかい」とも書いていないのに、
「美しく・あたたかで・やわらかな・平穏な日」であることも伝えていて
読み手をうっとりとさせる力を持っていました。

いつも参加してくれている小3男子の描き方は格別!
「風」という言葉さえ隠して書いていました。
そこまですることはないのですが、彼は一度やってみたかったのでしょう、
風が体をかすめて・くすぐっていく様子と
「捨てられたスーパーのふくろが地面をひきずられていく」
ことで「風」を見せていました。

テーマが同じなのに、描き方は違う、それが表現のおもしろさです。
全員の作文を読み上げることで、違いのおもしろさが確認できます。
しかし、読み上げることのよさは他にもあります。
まず、どこがどのように良いのかを伝えられることで、
自分に誇りを感じることができます。
そして、他のメンバーが見せた「自分にない工夫」を知ることで、
他者に対する敬意を自然に抱けるようになります。

この課題をやると、いつも
「あぁ、わたしたちってなかなかやるよね!」という雰囲気に教室が包まれて
なんだかほっこり・・・。
皆が教室を出る時の「さよ~ならぁ~」の声さえも、
いつもよりはずんで聞こえてくるのです。


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