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たまには「はい」じゃなくて、「おぅ」の気分で。 [教室]

1月も最終週。
今年度も終わりに近づいてきました。

以前は年度のシメとして、3学期には作文コンテストへの応募作品に取り組んでいました。
しかし残念なことに、そのコンテストは数年前に打ち切られてしまい、
今はこれといって参加したいものが見当たりません。
夏休みは多くある作文コンテストも、年度の終わりにはほとんどありませんね。
「学年」になんてしばられずに設けてくれるといいのですが
学校単位の参加を期待してのはからいなのでしょう。

そこで今年は、それぞれの家庭で購読してる新聞の投稿欄に
自分の作文を送ろう、ということにしました。

投稿文は400~500字と短いものです。
短いからこその難しさがあります。
原稿用紙1枚分の中で、いかに自分の姿を見せるか、
何をどう伝えるか、
などの戦略が必要です。

いつもは一度書いたら終わりの作文も、
今回だけは、推敲し、書き直し、さらにまた見直し・・・に取り組みます。
教室の作文は「中身重視」ですから、間違いを指摘し直す機会はほとんどありません。
しかし、自分の文章の癖を知り、同じ間違いをしないように気をつけて書くことは
やはり「していかねばならないこと」の一つではあります。
それを丁寧に伝えるチャンスになりますので、
今回だけは、細かく「何が・なぜよくないのか」を話していきます。


中学生のクラスでは、投稿文に一足早く取り組みました。
一人、他の人よりも早く「訴えたいこと」を定めた子がいて、
二度ほど文章をブラッシュアップさせました。
ただ書き直す際に、もう少し中身を充実させる必要があったので、
「前の文章を写してはいけないよ。同じ流れになってしまうから」と
一言添えて取り組んでもらいました。
しかし、一度書いたものを、別のアプローチで書くことは意外に難しいのですよね。
三度目に書き直したものは、確かに無駄は省かれていましたが、
前に用いた言葉をまた使い、前の作文とほぼ同じ流れで書いてありました。
簡潔ではあるけれど、
文章から書き手の熱は伝わってこない。
そういうものになりました。

形としては、特に問題はない。
言葉にも、さほど問題はない。
だから、「試験」の作文であればこれでいい。
でも、自分を知らない多くの他者が見る新聞に、
自分の名を冠して載せようという際に、
こういう種類のものを「いいよ」と言ってしまってよいのかと考えました。


もう一度「書き直して」というのは、その子にとって苦痛であるのはわかりました。
しかし、その子を長く見てきている私としては、
無難で間違いのない作文にOKと言って、正の評価を与えてしまうのは
この先のこの人へのプレゼントにはならないと感じていました。

そこで、心を鬼にして、「もう一度だけ」とオファーを出しました。
一瞬その子は顔をゆがませました(当然です)。
「書き直すというのは、前の言葉は捨てるということだよ。
言葉はいったん全部捨てるの。流れもね。
だけど、『これを伝えたい』という心は持っておく。
その心を、まったく別の言葉と別の作戦で訴えるようにするのが、
書き直すということ。
整理しながら書き写す、ということとは違うんだよ。」

その子は、「はい」と答えます。

「その『はい』も、今日はやめてしまおう。
『はい』と答えるキミではなくて、
『おぅ』とか『オス』とか答えるキミで書いてみようよ。
自分の中の違う自分で、書いてみるの。
今書いた文章も悪くはないけど、悪くはないというレベルでは
せっかくキミの名前を付けて発表するのに、なにかふさわしくない気がする。

キミが心に焼き付けている風景やキミの願いを、
キミの名前とともにきちんと読者の心に焼き付けてほしい。
そういうことができる力を、キミはもう持っていると思うよ」

彼は私の言葉を聴きながら「はい」と言います。
直後、二人でニヤッとして、「はい?」「・・・おぅ」。

その後も少しだけ背中を押して、あとはその人に任せました。
終了の時間が来て、途中まで書いたものを見せてもらいました。

嬉しかったのは、出だしが全く違うこと。
これまでの書き直しは、出だしの言葉が「前の文章からの流用」でした。
しかも「これはやめた方がいい」と伝えたものを使っていたときもありました。
しかし今回は、ほんとうに、全く違う始まりになっていました。
始まりが違えばもちろん展開も変わります。
出だしには、風景が見えました。
その人の熱意が感じられました。

すぐさま「いいね!」と彼に伝えました。
彼は照れたように、でも手ごたえをすでに感じていたように笑いました。


最後まで書ききってはいないので、まだどうなるかはわかりませんが、
「書き直し」は「書き写し」とは違うということ、
彼がこれからも意識してくれるといいなと思っています。
そうすれば、今後彼は「見直す・考え直す」際に強い力を持つはずです。

 

四苦八苦して一つの作品を仕上げる。
この格闘は各クラスで2月いっぱい続くはずです。
気力を充実させて、私も臨みます。


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