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場を描きだす 描写の課題 [課題―描写]

先週の「一人称禁止」課題。
大人にとっては易しそうでも、小学生にとっては意外に難しい面があります。
小学校低~中学年のうちは、主観でものごとを見ていますから
「自分を他人のように、外から見る」ことができるようになるには
ある程度の精神的な発達を待たねばなりません。

ですから、教室生の中には、自分を名前(三人称)で表していても
結局は「ぼく・わたし」の視点からしか書いていないものや
「『ぼく』が使えない!」ことを気にするあまり、
主語が全くない文章になってしまったものもあります。

しかし、課題のねらいにそっていないから今回はダメだった、という見方を
私はしません。
やってみること、試してみること、それが教室での活動の大きな意義の一つです。
うまくいかなくても、まず一歩踏み出してみた、
そのことを高く評価します。

踏み出した一歩でさらに地を強く踏みしめてもらおうと
いくつかのクラスでは今週、「5分の散歩」という描写の課題を行いました。
(カテゴリー『描写』あるいは『生活文』で紹介しています、ご覧ください)

今回は「人」よりも「場」をもっと入れてね、と強調しました。
そして、新しい物や場が出てきたら、
「ぜったいに」その物(場)について表す文を2,3文はつけること! と
ルールを設けました。
書いている間も見回り、
すぐに次の物を登場させているようであれば手を止めさせ、
物についての描写の文を入れてから、次に進むようにしました。

ストップをかけられるので、子どもたちとしてはやりにくい部分もあったでしょう。
しかし、時には「このリズム・この言葉」と具体的に見てみないと
しっかりと体得できないこともあります。

この工夫は、すぐに身につくような簡単なことではありません。
しかし何度も繰り返し行えば、見えるように・とどまって書くのが
その人の「当たり前」となります。
本科に在籍して2年目が終わろうとする小5の女の子の作文は
私が細かく注意しなくても、
リズムも見せ方も、独特の雰囲気をもったものとなりました。

いくつかを紹介しておきます。
ストップをかけ、どこか?どんなふうに?色は?形は?動きは?
などと尋ねましたが、「この言葉を入れろ」とは言っていません。
私からの働きかけを受けて、それぞれが自分で言葉を選びました。


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「今まではいいろに見えていたかべがとつぜん白くなる。前の二人は二本ある電とうのま下で止まる。二人のかげがとつぜんあらわれる。」(小3男子)

「満月は、茶色のビルの近くにあった。満月には少し雲がかかっている。でも光は見える。
満月は黄色で光っている。満月の周りをてらしている。満月の周りはうすい黄色で光っている。その満月は、とても低い位置にある。茶色のビルのななめ横にある。」(小5女子)

「青、白と色が変わる。前のアオイのかげができたりきえたりしている。「トントントン」と小さかったり大きかったり。みんなのくつの音が前と後ろから聞こえてくる。」(小6男子)

「ちゅう車場のまん中に立つ。東にはまんまるの月が空を照らす。こん色のうわぎがシャカシャカとゆれる。風がくっついたように耳が冷たい。ズボンの糸と糸の間から、風が入る。木々は横に少しゆれる。月が出ている反対側は、ゆう日がしずみ、もう夜を呼んでいるかのような色をしている」(小5女子)

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美しいとか明るいとか、寒いとか冷たいとか、そんなふうにまとめた言葉を用いなくても
「美しさ」「寒さ」を表現できます。
「美しい」と書いてしまったら、「美しさ」しか表せませんが
物の様子で伝えたら、「美しさ」以外のものも読み手に感じ取ってもらえます。

まとめない。さとらせる。
何度も何度も、伝えていきたい、大切な手法です。


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