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絵本の読解② 本文の分析 [課題―読解]

途中になっていた絵本の読解。続きです。

あるクラスでは、『おおきな木』の本文読解のために
原文、本田氏による訳、村上氏による訳を用意し、
それぞれが持つ味わいと言葉の置き方について
気が付くことを討論しました。

本田氏の訳は、リズムがあって子どもに親しみやすくなっているとか
村上氏のものは静かな感じで、ゆったりと響いてくるとか
そういったことを気が付くままに述べました。
しかし、なんとなく、ではなく
どの部分のどういった表現が、どのような効果を上げているか、
それは何をねらってのものかを
できるだけ明らかにして述べるようにしてもらいました。

今回は「感想」で終わらないことをねらっての取り組みでした。
ですから、印象の出所を意識することをわざとしてもらいました。
また、3人の言葉は「それしかない」と思って選ばれたものです。
言葉から、表現者の意図やテーマを見抜こうとする姿勢を持ってもらいたいと考え、
できるだけ「一言感想」で終えないように、言葉を継いでもらいました。

討論で出たことは他に、
・原文では、いくら年をとっても the boy と表されている。
しかし、本田氏の訳では、年を取った少年を「男」と表す。
村上氏は「少年」で最後まで通す。
本田氏は読む人(=こども)が混乱しないように大人になった少年は「男」とかえたのか。
・木は 「she」となっている。でも本田氏の訳では、木は男性っぽい。村上氏は女性。
この時代(1976年)の木のイメージは男性?
・なんども繰り返される the tree was happy. 
本田氏は「うれしい」と訳し、村上氏は「しあわせ」。なにをねらう?
うれしい、は気持ち、感情、動き。
しあわせは状態。 何がどう違うのだろう。

そういう話をしているうちに、もう少し奥に入った意見も出てきます。
・これは木と会話しているように感じない。
少年はものを言わぬ木から、自分のほしい言葉や答えを勝手に想像しているように思える。
・ほしいほしいと言うばかりで少年は何も返そうとしない。なぜ?
→返さないといけないの? なぜ返すべきなの?
・この関係は親子の関係? 親は子になんでも与え続ける? 見返りを求めずに?
・少年はなぜ何度も戻ってくる?
・少年は転機の時に帰ってくる。何かを確認するために帰ってくるみたいだ。
・「And the tree was happy...but not really.」
本田氏は「だけどそれはほんとかな」と訳し、村上氏は「なんてなれませんよね」と訳す。
このちがいは?
本田氏は「考えてみてほしい」という読み手へのサイン。
村上氏は、つぶやくよう。
but not really.は無いほうがより考えさせられるように思う。
・しあわせってなんだろう? なにが幸せ?

などなど、いくつも出ました。
このクラスには、小学生から高校生までが参加しています。
小学生だから難しいだろう、高校生だから易しく感じるだろう、
そういったことは全くありません。
参加している高校生からは「年下の人たちの感性の鋭さにびっくりさせられる」という言葉をもらっています。
この読解においても、互いが持つ感性の違いを生かして
幅広い討論ができました。

同年齢の人たちを集めてやるほうが
その年齢の発達に応じた課題が用意できるし、より的確に力を伸ばせるのでは、という
見方もあるでしょうが、
年齢の違いがもたらす気づきや背伸びが
子どもたちを「決められた」方向に向けずに済んでいいように思います。
だから私は、「年齢」によってテーマを選ぶことはしません。
ちなみに先週のこのクラスは、18歳から投票権を得ることを皮切りに、
集団的自衛権とある高校の教科書に載っていた
「である」価値と「する」価値についての文章を絡め、
時事テーマ作文に取り組んでいます。

作文の濃さ・深さはそれこそ千差万別。年齢によりません。
高校生でも、普段の観察力と問題意識がなければ上滑りの文章になりますし
小学生も、学校でやっている「まとめ作文」的なものなら、
「考え深める」取り組みはなされていません。

それを、ぐっと踏みとどまらせて、この教室においては
表現者としてテーマをもって文章に臨むことと
読み手を想定して言葉を選び構成を練ることに
挑んでもらいたいと思っています。

数回だけでは成せぬことです。
成果をすぐに求めず、「今」紙上に刻んだ言葉がその道の途上であると考え
コメントを返したいと考えています。

長くなりました。
次回は、保護者の方からよく質問される
「感想文の本の選び方」について書きたいと思います。


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