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生徒の作文 [課題―読解]

ずいぶん前にご紹介した、『セミとアリ』の読解。
そのときの生徒の作文を教室のホームページに載せました。

短い授業時間の中で、ぐっと集中して書き上げた作品です。
お読みいただければ幸いです。


教室のHP・・・ことばの泉 作文教室


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読解『セミとアリ』・・・子ども達の観点 [課題―読解]

夏期講座のご案内です。

初級コースと読書感想文コースにいくつか満席の日ができました。
小学生対象の中級や混合コースにはまだ空きがありますので、
そちらの日時をご検討いただけますと幸いです。

日程は『ことばの泉 作文教室』のホームページでご確認ください。

お会いできますのを楽しみにしております。


 

さて、『セミとアリ』の読解の続き。

前にも書きましたが、この教室での作文は「挑戦の作文」と位置づけています。
良い/悪い・正しい/間違っていると大別して考えていくものを求めません。

あなたはこの姿をどう見るか。
そしてあなたはどう生きているか。どう生きることを望むか。

それを考えるために書くのだよ・・・そう伝えてから書いてもらいます。


一人の中学生男子が、「知らない」を軸にした作文を書きました。

セミはアリの努力を知らない。炎天下の下、おそわれる危険を押して必死に食料を集めたことを知らない。だから簡単に「食べ物をくれ」などといえる。しかし、アリもセミを知らない。セミが外の世界に出るまで、何年も地中で待ち続けた、その時間と忍耐を知らない。だからあっさりと頼みを切り捨てられる。互いに互いの苦労を知らないのだ。

と、このような主旨の文を書きました。

「知らない」ことが互いの生き方への理解を阻む。
違いを知ろうとすることは、多民族が暮らすこの世界では重要なことです。
鋭い指摘でしたので、他のクラスでも紹介しました。

すると、それに触発された子らが、深い考察と自らに問う作文を書き上げてくれました。
一部を抜粋します。


ぼくがセミだったとしても、アリに「食べ物をめぐんでください」と言えたと思う。なぜなら、自分がやらなければならないことをちゃんとやっているのを、自分は知っているからだ。

それぞれの生き物は、それぞれに生き方や生きるための知恵を持っている。それがアリでいうと、アリの一生というのを先まで見越して考えた時、一本の道筋を立てて、規則正しく、計画的に食料をたくわることである。セミでいうと、生きている一瞬一瞬に目先のことだけを考え、限られた命の中で必死に子孫を残そうとしている。それぞれの生き方は、それぞれにしかできない生き方であると同時に、その生き方しか知らない。

人は、第一印象できめてしまう。なまけているように見えればなまけ者といい、しんけんに働いているように見えれば働き者としてしまう。セミとアリも同じで、アリは自分達は働いていたのに、セミは歌っていたといったら、アリは自分達がえらいというように、セミを哀れに見てしまうだろう。しかし二匹とも自分の生きるための使令をまっとうしただけなのだと思う。

 

他に、女の子が作るグループの中の「リーダー役」「合わせる役」の存在を指摘し、
「一緒にいるのと従っているのとはちがう」と言って
「必要以上に他人といる=群れる」ことへの意見を書いた人もいましたし、
クラスの中に嫌われ者がいることを挙げ、「無視する自分」を捉えようとしてみた人もいました。

 

皆が、それぞれに挑戦に満ちた作文を書いてくれました。

「先のことを考えて働かねばならないよ」「助けを求める者がいれば、手を貸すのだよ」と
こちらから示してしまうより、
働くってなんだろう、ただ指示されたことをするのではない「働く」ってなんだろう、と考えたり
助けるのは「相手による」というのなら、
どんな相手ならと自分は考えるのだろう、なぜそう「選ぶ」のだろう、と自問を重ねたりしたほうが
その子の中にしっかりと根付くものがあるように思います。


長々と書いてしまいましたが、これが教室でやっている『読解』です。
果敢に挑んでくれる教室生を、私はとても誇らしく感じています。


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読解『セミとアリ』・・・行動と構造を読む [課題―読解]

『セミとアリ』の読解の続きです。

物語の主役達が何を象徴しているかを捉えたら、各々の行動について考えていきます。
最近の『アリとキリギリス』では、アリがキリギリスに食料を与え助ける結末となっているようですが
今回は装飾を省いた、元の話に近いであろうものを選びました。

用意した話では、助けを求めてきたセミに対し、アリは笑って
「夏のあいだ歌っていたって? それなら、冬のあいだ踊っていたら?」
と言う・・・そういう結末になっています。


小学生の多くは、セミに同情しませんでした。
「準備しなかったから仕方ない」「自業自得っていうんだよね」
「せっかく苦労して集めたものをあげられない。あげたら、自分の分がなくなる」
そんな声を聞きました。


そこで、考えます。
セミは本当に怠けていたのか、と。

タイトルから読み解いたことをもう一度引き合いに出します。

オスのセミは、鳴くことでメスを引き寄せます。
鳴くことは、命をつなぐことであり、自分が今、しなければならないことです。
そのために、何年も何年も、刺激のない地中で、待ち続けたのです。
長い時間の閉塞から逃れ、明るい光と色に満ちた世界に羽ばたいたセミが
渾身の力で鳴くことを、「怠けている」といえるでしょうか。

一方、アリ。
アリは食料を集めました。しかし彼らは自分の意思でそれを行ったのでしょうか。
アリは集団生活を営みます。
それぞれに役目を与えられています。
自分に与えられた役割を日々遂行します。
疑いを持ったり、面倒だからと仕事をやめたりすることはできません。
集団に属する限り、自分の役割を放棄するわけにはいかないのです。
それは集団での自分の位置を喪失することであり、死を意味することでもあります。

命を繋ぐために、アリたちも自分に今、課せられたことを行っているのです。


そんな話をしながら、いくつものキーワード抜き出していきます。
集団。役割。仕事。命。自由。束縛。助け。いじめ。
クラスごとで反応が違いますから、どのキーワードに重きを置くかは変わってきます。

キーワードにまつわる私の体験を話したり。
子ども達の体験を述べてもらったり。
映画の中のセリフを引用したり。
他のクラスで出た意見を紹介したり。

そうやって深めながら、自分が今、考えてみたいことを探していきます。
私が彼らに求めているのは、「良い・悪い」「得・損」とに二極化させて考えることではありません。
また、「かわいそう」と単に同情を示して終わるものでもありません。

今、ここにある二人の姿が、自分に何を喚起したかを考えることを、私はひたすら求めます。
ここにあるのは、「アリとセミ」の姿ではなく、
人間、そして自分の姿です。
自分も何かの社会に属するものです。
これは私、そして自分の属するクラス、学校、友人グループ、家族・・・のことなのです。


うまく書こうとしなくていい、ぐちゃぐちゃになってしまってもいい、
ここで書く作文は挑戦の作文なのだから、
今、自分が一番語りたいことを探して書いてほしい・・・そう伝えて、作文に臨んでもらいました。


さて、子どもたちはどんな観点を持ったか。
それについては、来週ご紹介したいと思います。



夏期講座のお知らせ です。

教室のホームページに夏期講座の日程を載せました。

表記や文法の指導はいたしませんが、
考える力と人に伝えたいと思う気持ちを刺激できるよう、指導に当たっています。

教室にご興味をお持ちの方は、この機会にお会いできますと幸いです。
多数のご参加、心よりお待ちしております。


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読解『セミとアリ』・・・タイトルを読む [課題―読解]

上級と中級の一部で、昔話の読解を行っています。
今回の題材はイソップの『セミとアリ』。
『アリとキリギリス』の原話とされているものです。


初めて読解に挑む人もいるので、中級では丁寧に進めました。

まずはタイトルから。
タイトルはただの飾りではありません。物語の顔となるものです。
話のテーマがタイトルに潜んでいることも多いので、
タイトルに用いられた言葉をじっくり吟味することから、読解を始めていきます。

************************************* 


「さて、アリとセミ。他の昆虫でもよかったはずなのに、あえてアリとセミが選ばれた。
なぜだろう? それを探るために、アリとセミからイメージされることを挙げていくよ。
じゃあ、アリから。アリとは? どんなもの?」


「小さいもの」
「地面を歩くもの」

「おっ、いいね。そうそう、アリは地を這う。セミは? 空を自由に飛びまわる」
「上と下だね」「セミが上から見ている」

「それから・・・黒いもの? 赤もいるか」
「えーーーと、パス!」
「アリは小さいけど、協力して大きいものも倒す」

「ああ、そうだね。アリは、1匹だと小さくて弱い。だから、多数で敵に立ち向かう。
集団で危機に向かうんだね。アリが象徴するものの一つだね」


などのように、アリの生態から特徴をつかんでいきます。
アリの最大の特徴は集団生活を営むこと。
そこには特に深く切り込んでいきます。

多くのクラスで次のような視点が出てきました。

  ・集団で生活する/集団で力を発揮する。
  ・女王がいる・・・リ-ダーの存在・率いるもの、守られるものがいる。
  ・働くものがいる・巣を守るものがいる。・・・役目がある。
  ・一列で進む・・・道を作る/誰かがつけた道を辿って進むものである。
  ・巣がある・・・定住するもの/守るものがあるもの。
  ・協力する/助け合うもの。
  ・貯えるもの、財を持つもの。
  ・冬に備える・・・先をみて動く/危機に備える

同様にしてセミの読解。アリで考えたことと比較しながらセミの特徴を捉えます。

  ・集団では行動しない。個で生きる。
  ・働かないもの、もしくは働いていないように見えるもの。
  ・派手/目立つもの。
  ・世に出るまで、ただ待つだけの時間を長く持つもの。
  ・変化するもの。
  ・鳴くのが仕事。生きるために鳴く。命を繋げるために鳴く。
  ・はかない。人の目につく時間は短い。
  ・貯えない。今を生きるもの。
  ・空を飛ぶもの。自由に見えるもの

アリとセミを読み解くうちに、古代にも現代にも共通する「人の姿」が見えてきます。
アリとセミ、どちらがよいかという観点で話を進めるのではなく、
こういう姿がある、それをどう見るか、今の自分に置き換えて何を思うか、という働きかけをしていきます。

「長い間語り継がれている話には、それだけの理由がある。
気づいていると思うけど、このアリとセミは、昆虫じゃない。
これは、『人』だ。
昔のお話だけれど、そこに描かれた姿は、今の私たちにも通じるものだ。
いつでも、新しい。考えさせられる何かがある。
思いをめぐらせる余地を持ったお話だからこそ、ずっと長く語り継がれているんだ。

人が、人の生き方が、永遠のテーマなんだよ。
童話だから、短いお話だからって馬鹿にしちゃいけない。
長く読まれてきたお話には、深さがある。その深さに、私たち自身のことを考えていくんだ」


このようなことを討論時に話します。

出てきたキーワードを元に、さらに話を発展させていくのですが
この続きは、また来週に・・・。


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読解 『こぶとりじいさん』 [課題―読解]

中級クラスでは今、読解課題に取り組んでいる。
題材は『こぶとりじいさん』。


今年度初の読解だったので、討論にじっくり時間をかけた。
話し合ったのは、主に下の3点。

1 『こぶ』とは何か ー 定義を考える
2 二人目のじいさんが、こぶを取ってもらうために行った際の行動について
3 じいさん二人のその後

1 『こぶ』とは何か
いつも必ずやることだ。 話のカギとなるものを取り上げ、それが何を示しているかを考える。
『こぶ』を単にほっぺたについているものと捉えては面白くない。
人にとってどんな存在かを考えていく。

最初は「こぶの説明」をしようとする子が多かったが、それではすぐに尽きる。
尽きてからが勝負。 目線を変えるきっかけを作る。 
誰かが言えばそれを拾い、どうも難しいようなら私が口火を切る。

出てきたのは・・・
「じゃまなもの・できもの・ぶらさがっているもの・目立つもの・特徴・人とは違うもの・
変わっているもの・珍しいもの・わらわれるもの・きらわれるもの・取りたいもの・切り離したいもの・
重いもの・みにくいもの・はずかしいもの・自分の一部・一部でなくていいもの・名前になるもの」
など。

 
と、ここで、「君達に『こぶ』はある?」と尋ねてみた。
皆、「ない」と即答。 「そんなのひっついてない。」
そう言うので続けて、
「そうだね、見える『こぶ』はね。 でも、見えない『こぶ』を心に持っている人はいない?
自分のこういうところはいやだとか、こういうのはなくなってしまえばいいのに、と思うこと、ない?
はずかしい、かくしたい、そう思うところってないの?」と聞いてみた。

すると、考え込む人が数人。
ぽかーんとしている人も、数人。
「あ~、あるよ~。 でも、そういういやなとこも私の一部だし~」といい始めたり
「・・・そんなの、ないよ。 とってしまいたいようなとこは、自分にない」と言ったり。

これが中学生になると、少し変わる。 だが、今、それを求めはしない。
小学校高学年の今の時点で、自分が思うことを言えばいいのだ。
とはいっても、『こぶ』が他人のものでなく、自分にもあるのではないか、と考えることはしてほしい。
昔話は、大昔の、自分ではない誰かの話ではなく、
今の、自分達にも通じる話なのだ。 だから、読み解くのだ。

 

その後、二人目のじいさんは、どうすればこぶを取ってもらえるかを知っていたのに
(つまり試験科目を知っていたのに)、
下手な踊りと歌を披露して終わったことを取り上げ、どうするべきだったかと考えたり、
二人のじいさんは、こぶがなくなって(あるいは増えて)どう感じたか、どう生きるようになったか、
また、村人達はどう反応しただろうかと考えたりした。

その後のじいさん達について考えているとき。
私が、「そうか、こぶがなくなったじいさんは、『こぶのじいさん』という名前がなくなっちゃったんだね。
名無しになっちゃった。 特徴がなくなって、目立てなくなってしまった上に名前もなくしたのか」
と言ったら、
「ちがうよ、あるよ」と言われた。

「『こぶなし』って言われるんだよ」

・・・。その通り。 じいさんはこぶと名を捨てて、新たな名を得たのである。
しかし、こぶは存在しないのに、名にはまだ『こぶ』がある。
この新しい名で、じいさんはどう生きるのだろうか。
 


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